常総市

更新日 令和5年8月9日

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概要

PPP(Public-Private-Partnership、公民連携)とは、行政が行う各種行政サービスを、行政と民間が連携し民間の持つノウハウ・技術・資金を活用することにより、行政サービスの向上、財政資金の効率的使用、行政の業務効率化等を図ろうとする考え方や概念である。

これまでのPPP事業というのは、行政側が発注者、民間企業が受注者という関係で、官の側が強く、行政側がさまざまな内容を決めたうえでの仕様発注ということで、民の自由度が低いというものであった。それに対し、これから取り組むべきPPP事業というのは、官と民が対等の関係で、事業を共に作っていく関係性が重要である。さらに発注の方法としても、性能発注ということで民間事業者の力をより生かす、自由度が高い事業を進めていく必要がある。常総市では、行政の役割としては民間事業者がいかに提案や投資をしたくなる制度や環境を作っていくことが必要と考えていた。

そのような中で、常総市では、これまで以下の取組を行ってきている。

・包括施設管理業務委託
これまで施設所管課ごとに管理してきた公共施設を、民間ノウハウを活用して包括的に管理することで、管理業務の効率化による経費削減や統一した考え方による適切な維持管理を実現する手法である。ビルメンテナンスの専門業者に一括して発注し、そこがそれぞれの業務を下請けの各事業者に発注していく。導入の目的としては、(1)公共施設の管理レベルの向上を図り、利用者の安全を確保する。(2)施設管理に係る事務コスト(予算要求から契約、履行の確認、支払い・監査など)を大幅に削減していく。

対象施設は、8課46施設を対象としてスタートして、業務数としては年間334業務となっている。この業務で賄う公共施設の範囲は面積ベースで、約15.6万平方メートル、公共施設の約7割がこの業務での管理となっている。さまざまな点検業務、清掃、宿直、電話交換、建築基準法の定期報告などが行われている。包括管理業務委託導入による付加価値としては、業務水準の向上、巡回点検、管理情報の共有・活用、民間ノウハウの活用である。

・トライアル・サウンディング
公共資産を民間事業者に無料で暫定利用してもらい、そこで得られた経験・知見・市場性を本格利用に反映させていく取組を全国で初めて常総市が令和元年に実施した。

実際の流れは、募集を開始した後、暫定利用の受付で、事業概要・行政財産使用許可申請書を提出してもらい、その後、市で提案審査したうえで、使用許可をし、暫定利用に進む。暫定利用期間中のモニタリングや終了後の事業報告ヒアリングを行い、トライアル・サウンディングの結果を反映して、本格利用の公募につなげていく。トライアル・サウンディングは行政財産目的外利用を活用し、その利用料を免除するだけで実施可能な仕組みである。

トライアル・サウンディングのメリットについて、自治体側のメリットとしては、住民との合意、議会説明のデータの収集、公募条件の整理、事業者の信頼度の確認、施設のポテンシャルの確認があげられる。事業者のメリットとしては、実際に使用することで施設や敷地の使用感を確認でき、マーケティング調査もあわせてできる。自治体側とさまざまなやり取りをしたうえで事業を実施することとなり、自治体側の柔軟性や対応を事業者としては確認できる。実際に事業を公共施設で行うことで、机上ではない本物の市場性や民間と連携することの意義や効果を確認することができる。

トライアル・サウンディングの効果として、民間事業者が創意工夫をして魅力的なコンテンツを付加することで、 10倍の使用料収入と高い満足度を獲得するなど公民連携による経営への効果や施設のポテンシャルを実感できたこと、理想の風景を出現させるということは説得力があると感じたとのことであった。

初めてトライアル・サウンディングを実施した「水海道あすなろの里」については、平成29年、30年くらいから老朽化する施設、来場者が減っているとして対策を全庁的に検討していた。平成30年にサウンディング型市場調査を実施し、令和元年にトライアル・サウンディングを実施した。その後、令和2年に「あすなろダイニング&里カフェ」が民間事業者の力で施設改修を行ったうえで、リニューアルオープンされた。令和3年、令和4年とサウンディングやトライアル・サウンディングの実施を経て、検討を進めた結果、アウトドアエリアを指定管理者にお願いするかたちとなり、令和4年4月から10年間の指定管理が始まっている。指定管理についても施設の通路や看板、給排水の施設整備に関しては、民間事業者の投資によって行われており、指定管理料も0円で、逆に市へ一部を納付金というかたちでいただく内容の指定管理となっている。

・常総市公共施設マネジメント民間提案制度
民間事業者が自らのアイデアやノウハウ、技術等によって、公共施設マネジメントや自治体経営に貢献する提案を自由に行うことができる制度である。
提案の対象はすべての公共施設、一部の遊休地、公園で、条件は市の新たな財政負担がないこと、事業化協議が成立した時点で提案者との随意契約を保証することとしている。
導入の目的は、公民連携による資産の有効活用、維持管理コストの削減、市の魅力向上を目指して取組をしている。
実施の流れは、提案の募集・事前相談、提案の受付・選定、詳細協議、協議がまとまると随意契約で契約となる事業となっている。

・民間提案制度と電力調達
業務用および高圧施設の電力調達は、民間提案制度で付加価値を付けて実施していた。また、長期契約とすることで、結果的に昨年からの電力調達価格上昇にも対応していた。

・民間提案制度と随意契約
全国的に民間提案制度の導入が進んでいて、40~50の自治体が導入している。随意契約を保証しない民間提案制度では、提案を参考に再度公募することとなり、民間としては知的財産への配慮がないため、ハイリスクノーリターンとなり、民間の提案意欲は低くなってきてしまう。それに対して随意契約保証型の民間提案制度は、知的財産への配慮をすることで、リスクとリターンの適正な負担が官と民の間で行われ、民間の提案意欲が高まっていくのではないかと常総市では考えていた。公民連携の原則としては、「対等と信頼の関係」というのが重要だと感じているとのことであった。

・市有地活用事業とまちづくり
PPPに取り組み始めた初期の事業である。市有地の売却ということで、サウンディング型市場調査を平成30年度に実施していた。対象案件は3つあり、市が保有する中でも面積が広く、売却を進めたいという案件をピックアップし、市場調査を行った結果、3つのうち2つは市場性があるとの意見をもらい、市有地売却に係る公募型プロポーザルを行った。対話やサウンディングの中で市場性があると言ってもらった事業者に売却をすることができたとのことであった。サウンディングからプロポーザルにうまく流れがつながった事例として、活用されていなかった平成23年に閉校した旧自動車学校は、一般競争入札を行うも売却に至らなかったが、平成30年にプロポーザルを実施して、2億円超の価格で売却ができた。そこで行われる事業として、HONDAの自動運転技術開発を行うAI・自動運転パークとして再生していた。こちらの事例では、売却して終わりということではなく、その後も協議を継続し、「AIまちづくりへ向けた技術実証実験に関する協定」を締結し、知能化マイクロモビリティの進化と実現に向け、市有地や市有施設を活用した市内での技術実証実験の実施につながっていた。

所見

超少子高齢化の時代に入り、行政運営における財源の確保が非常に厳しい上、多様化、複雑化、高度化する住民ニーズに行政だけで対応するのは困難であり、住民サービス向上のために、民間活力の導入により、財政的、人的な資源確保が必要と思われる。
我が町においても、指定管理者制度導入等、広い意味での公民連携は取り入れているが、本格的PPP/PFI(公民連携)事業の導入はこれからという段階である。
先進自治体の事例をそっくりそのまま取り入れても個々の自治体の事情・状況は異なるので必ずしも良い結果を生むとは限らないと思われる。しかし、常総市のようにいろいろな対象に事業を展開して結果を収めた経緯・経験を伺うのは非常に参考になると思われた。

常総市は、平成28年よりPPP導入準備のため、自治体、企業や組織が保有する施設や設備(ファシリティ)、さらに、それらが取り巻く環境まで含めて総合的に企画・管理・運営・活用を担うファシリティマネジメントの職員研修を開始していた。平成29年には民間事業者と意見交換を通じ、事業に対してのアイデア・意見・市場性を把握するサウンディング型市場調査を行い、平成23年に閉校した旧市営自動車学校跡地の市有地における市場性を確認し、公募型プロポーザルを実施して2億円以上で売却し、HONDA(本田技研株式会社)が自動運転技術開発の拠点AI・自動運転パークとして再生させた。令和元年には、教育財産である水海道あすなろの里で、実際に一定期間事業を行い、市場性等を試してみるトライアルサウンディグを日本で初めて実施し、完全民間資金による食堂のリニューアルを行っていた。そして、令和2年には市の46施設(全体の32%)で公共施設包括管理委託業務をスタートし、それまでの個々の施設管理契約を一括にして、事務処理費の軽減や管理の質の向上などの成果をあげていた。また、公民連携事業による効果としては、(1)多くの民間事業者が常総市に興味を示している、(2)庁内に公民連携の意識が芽生えつつある、(3)さらなる公民連携事業推進の下地ができつつあるといったことをあげていた。その一方で、(1)地元企業との公民連携事業の推進、(2)庁内に公民連携の意識を根付かせる、(3)常総市ならではの公民連携事業の構築が課題であるとしていた。

数年の間にいろいろな事業を取り入れて、試行錯誤しながら進めてきて、紆余曲折もあったと思われる。常総市のPPP事業のスタートからアドバイザーをされてきて、認定ファシリティマネジャー・国土交通省PPPサポーターで「PPP/PFIに取り組むときに最初に読む本」を執筆された寺沢弘樹氏が、本の中で「一緒に事業に取り組んだ常総市の職員は、市の財政状況等を考えればどんな理由を付けても簡単に言い訳できるはずであるが、決して言い訳をしない、まず、やってから考えるが口癖である」と言っている。職員の前向きなやる気と、良きアドバイザーとその方に続く担当者(視察当日、説明をしてくださった担当係長も国土交通省のPPPサポーターである)の存在が、常総市の事業の結果に大きく影響していると思われる。

我が町でも、行政運営にPPP/PFI等の手法による民間活力の本格的な導入が必要で、避けて通れないと思われる。常総市では、行政の役割としては民間事業者がいかに提案や投資をしたくなる制度や環境を作っていくことが必要と考えていた。このような視点で、将来を見据えた民間活力導入の具体的な取組をしていく必要があると考える。

jousousisatokafe
サウンディングやトライアル・サウンディングの実施を経て
民間事業者の力で施設改修を行ったうえで、リニューアルオープンした
「あすなろダイニング&里カフェ」

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