岡山県岡山市 「協働推進事業について」

更新日 令和8年9月1日

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調査概要

岡山市では、阪神淡路大震災後のボランティア活動の活発化を背景に、平成13年に「協働のまちづくり条例」を制定し、市民・地域団体・特定非営利活動法人(NPO)・企業など多様な主体が地域課題の解決に参画する仕組みづくりを進めてきた。条例制定当初は、NPOを中心とした公益活動の支援を目的とした内容であったが、地域課題の複雑化や担い手不足の進行を受け、協働の必要性が高まったことから、平成28年に条例を全面改正した。
改正後の条例では、協働の理念として、(1)相互理解、(2)目的共有、(3)対等、(4)自主性・自立性の尊重、(5)公開の五つを基本原則として明記し、行政と市民が対等な立場で地域課題に向き合うための価値観を共有することを重視している。また、協働を推進するための体制整備、人材育成、情報共有、優良事例の表彰、協働事業制度化など、協働を総合的に進めるための仕組みが条例に位置付けられた。
協働推進の体制として、市役所内には「ESD市民協働推進センター」が設置されており、協働の相談窓口、事業の伴走支援、協働に関する講座・フォーラムの企画運営、NPOネットワーク形成などを担っている。同センターは、協働の中間支援組織として、行政と地域団体の双方をつなぐ役割を果たしている。また、庁内には60課で構成する「協働推進本部」が設けられ、各課に協働推進員を配置することで、行政内部で協働の視点を共有しながら、既存施策の見直しや新規事業の検討を進める体制が整備されている。行政内部の体制整備が徹底されていることが、協働の実効性を高めている。
協働推進計画は5年ごとに改定され、令和8年3月には第3次協働推進計画が策定された。第3次計画では、地域組織の弱体化、担い手不足、情報発信の多様化など近年の課題を踏まえ、「協働の担い手育成」「多様な主体の参画促進」「協働の取組の発信と環境整備」の三つを基本方針として掲げている。これにより、協働を単発の事業ではなく、継続的な政策として推進する枠組みが整備されている。
協働の具体的施策としては、公民館を拠点とした地域支援、人材育成、協働事業制度化、情報共有の仕組みづくり、優良事例の表彰「おかやま協働のまちづくり賞」、市民協働モデル事業の支援などが行われている。特に「市民協働推進事業」では、事前協議、伴走支援、事業評価、一般施策化までの流れが整理されており、行政と団体が共同で課題解決に取り組む仕組みが確立している。また、協働情報の発信拠点として「つながる協働ひろば(サイト・SNS)」を運営し、市民活動の見える化を進めている。
町内会については、岡山市内に1,711の町内会・自治会があり、加入率は70%強と高い水準を維持している。しかし、役員の高齢化や担い手不足が進む中、令和6年に議員提案により「岡山市町内会等との協働による地域活性化推進条例」が制定された。この条例は、町内会を地域コミュニティの中核として位置付け、市の責務や町内会・住民・事業者の役割を整理した理念条例であり、加入義務を課すものではない。条例制定の背景には、町内会活動の負担増加や加入率低下への危機感があり、町内会の意義を社会全体で共有する必要性が高まっていたことがある。
条例施行にあわせ、市は「地域活動支援事業」を開始し、草刈り機などの備品購入に対する上限50万円の補助、祭り備品の助成、ボランティア募集情報の発信など、町内会活動の負担軽減と活性化を図っている。令和8年度からは町内会のデジタル活用支援も開始し、町内会向けアプリ利用補助、市公式LINEへの町内会機能追加、デジタル活用が難しい町内会への伴走支援など、活動の効率化と負担軽減を図る取組が進められている。
さらに、岡山市では中山間地域や人口減少地域を対象に「地域の未来づくり推進事業」を実施し、地域課題をコミュニティビジネスの手法で解決する取組を支援している。地域資源を生かした商品開発や交流拠点づくり、高齢者の生活支援などが対象で、ソフト事業は1,000万円、ハード事業は1,500万円を上限に3〜5年間の補助を行っている。事業化のハードルが高いため、市は講演会やセミナー、ビジネスプラン作成支援など伴走型支援を行い、制度開始以来26事業が立ち上がっている。
以上のとおり、岡山市は協働推進、町内会支援、地域づくり推進事業を体系的に整備し、行政・地域・企業・団体が連携して地域課題を解決する仕組みを構築している。条例・計画・体制・人材育成・情報発信・財政支援が一体となった協働モデルは、地域コミュニティの持続性を高める取組として特徴的である。

所見

今回の岡山市の視察では、協働の取組が単なる制度や事業ではなく、「仕組み」として行政全体に根付いている自治体の姿を確認することができ、大変学びの多い視察となった。特に、平成28年の条例改正を契機として、協働の理念や基本原則を明確化し、それを5年ごとの協働推進計画で具体的な施策へと落とし込む体制が確立されている点が印象的であった。公民館職員や地域担当職員、ESD市民協働推進センターなど、多様な支援主体がそれぞれの役割を担いながら地域を支える仕組みは、協働を行政文化として育てている証であり、行政内部の体制整備を徹底することにより、協働の実効性を高めている点は、特に評価できる。
協働事業の進め方も非常に実践的であり、事前協議、伴走支援、事業評価、一般施策化までの流れが整理され、行政と団体が対等な立場で課題解決に取り組む姿勢が徹底されていた。補助金を交付するだけでなく、「一緒に課題を解決する」ことを重視した制度運用は、瑞穂町でも参考になると感じた。また、地域の担い手不足に対して、公民館に配置された地域担当職員が日常的に地域の会議に参加し、課題を拾い上げる体制が整備されている点は、地域コミュニティを支える上で極めて重要である。
協働の取組を市民に伝える情報発信も充実しており、「つながる協働ひろば」やSNSによる発信、「協働のまちづくり賞」による優良事例の紹介など、協働を「見える化」する工夫が随所に見られた。協働を広げるためには、こうした継続的な発信が不可欠であることを改めて認識した。
町内会については、加入率70%台という高い水準を維持しているにもかかわらず、担い手不足や加入率低下への危機感を持ち、議員提案による町内会条例を制定した点が、同じ議員として刺激を受けた。草刈機等の資機材導入費の全額補助、祭備品の助成、デジタル化支援、新任町内会長説明会など、町内会を「地域の宝」として重視し、負担軽減と活動活性化を図る施策が体系的に展開されていた。条例によって町内会の意義を明確化し、行政と地域が共通の理念のもとで役割分担を進める仕組みは、瑞穂町でも検討すべき重要な視点である。
さらに、「地域の未来づくり推進事業」は、地域資源を生かしたコミュニティビジネスを支援し、地域課題の解決と地域経済の循環を促す取組として非常に有効である。地域住民の意欲を引き出し、行政が財政的・専門的に伴走する体制は、人口減少地域の持続可能性を高めるモデルとして学ぶべき点が多い。
また、地域協働を進める上で、企業のCSR(企業の社会的責任)を生かした参画は、今後ますます重要になると感じた。企業が持つ人材・技術・ノウハウは、地域課題の解決に大きく寄与する可能性があり、岡山市でも企業が協働の担い手として位置付けられていた。瑞穂町においても、地縁組織だけに依存した地域運営には限界があることから、企業・事業者・学校など多様な主体を巻き込み、地域を支える新しい協働体制を構築することが必要である。
今回の視察を通じて改めて感じたのは、RMO(地域運営組織)の重要性である。RMOは小学校区を単位として構成されることが多く、自治会・町内会、NPO法人、消防団、事業者、そして自治体が協力して地域課題に取り組む仕組みである。これまで視察した自治体でも数多く存在しており、地域の持続可能性を支える基盤として機能していた。瑞穂町においても、人口減少や地域組織の弱体化が進む中、RMOのような多主体協働の地域運営体制は決して他人ごとではなく、今後の地域づくりにおいて重要な選択肢となると強く感じた。
岡山市の協働推進は、条例・計画・体制・人材育成・情報発信・事業支援が一体となった高度な仕組みであり、瑞穂町の協働推進や地域コミュニティ支援を進める上で、極めて有益な示唆を与えるものであった。今回の視察で得た学びを、瑞穂町の現状と照らし合わせ、委員会の議論や今後の施策検討に確実に反映していきたい。

okayamashi
岡山市役所で研修を受けている様子

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