石川県白山市 「市民提案型まちづくり事業について」
更新日 令和7年12月1日
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調査概要
石川県白山市では、人口減少や高齢化、地域間格差の拡大といった社会的課題があり、地域活動の継続が難しい状況にあった。特に、平成17年の市町村合併以降、旧町村部では人口の減少が著しく、地域の担い手不足や生活基盤の維持が困難となっていた。平成23年に「自治基本条例」を施行し、市民参加と協働による自治の推進を制度的に整備した。この背景をもとに、市では、活力あるまちづくりを推進することを目的として、市民が主体となって地域で考え行動することを支援する「白山市市民提案型まちづくり事業(補助制度)」を平成30年からスタートさせた。これは、上限50万円で、青年会や地区防災委員会といった各種市民団体に対し補助する制度であり、対象となる事業は、公民館区を対象とした新規事業や地域の広範囲に効果があり公共の利益につながるもの、また、地域内の連携による新たなまちづくりの展開などに関するものであった。毎年募集を継続し、採択事業数も増加していたが、担い手不足や地域課題の多様化など地域活動の継続に関する深刻な問題があった。これらの解決と住民主体のまちづくりを推進するため、新たなコミュニティ組織を創設する段階に入った。持続可能なまちづくりを行うためには、地域の特徴や活動、課題、困りごとを話し合い、“地域でできることは、地域で知恵や発想を出して取り組む”仕組みが必要という考えから、令和5年度に「地域コミュニティ条例」が制定され、「公民館」という名称を「コミュニティセンター」に変更し、全28地区に「コミュニティ組織」を設立した。制度導入にあたっては、平成29年度から市長自らが全地区を訪問し、市民協働の必要性を丁寧に説明し、住民との対話を重ねてきた。組織の運営においては、元々公民館で勤務していた職員と新たに地区の代表格の住民(町内会長等)が加わり行っているが、次世代の育成が追いついておらず、会合の増加による負担感も課題として挙げられていた。コミュニティ組織に対する交付金も、地域コミュニティ推進交付金として拡充され、従来の公民館予算約180万円と統合して最大230万円が一括交付されることとなった。交付金の対象事業は「地域づくり」「地域力向上事業」「住民交流事業」「一般事業」「生涯スポーツ」があり、住民の意欲向上に役立っていた。地域コミュニティ組織と連携しながら町内会活動も継続されており、「自助・共助・公助」の理念に基づき、災害に備える体制づくりを進めていた。自主防災組織も結成され、避難所運営訓練や防災訓練が定期的に行われているなど、町内会は住民にとって一番身近な組織として機能しており、それぞれが地域づくりにおいて重要な役割を担っていた。
所見
地域コミュニティ組織は、町内会の代替ではなく、行政と地域をつなぐ架け橋として重要な役割をもった中核的な枠組みであり、瑞穂町も町内会加入率が減少し、今後、どのようにコミュニティの形成を図っていくのかは大きな課題であるためとても参考となった。また、地域コミュニティ組織の制度化は、地域課題の深刻化に対して住民主体の解決力を高める仕組みとして非常に有効であり、行政との協働を制度的に支える点で先進的な取り組みと感じた。そして、地域コミュニティ組織に対する補助金の導入についても、住民の裁量と意欲を引き出す仕組みとしては欠かせないのではないかと考えられる。白山市は全ての地区で組織化ができているが、この成功の背景には、市が長い時間をかけて住民理解を得てきたことがあってこそだと考えられる。まずは協働意識の醸成と段階的な組織化を図る取り組みが必要である。瑞穂町においても、モノレール延伸や地域課題の複雑化を背景に、町民との協働によるまちづくりは必須であり、制度設計、条例、組織の構築、財政支援の整備が求められる。
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