茨城県高萩市
更新日 令和6年12月2日
ページID 10476
調査概要
高萩市内では、定時定路線のバスおよび呼出型最適経路バス「MyRideのるる」ならびにデマンド型乗合タクシーが地域や時間帯に合わせて、効率的に運用されている。
呼出型最適経路バス「MyRideのるる」
呼出型最適経路バス「MyRideのるる」は、人工知能(AI)を利用して、利用者からのリクエストに合わせてバスの運行経路とダイヤを最適化して運行される。既存の標柱バス停に加えて、システムの地図上に数多くの仮想バス停(バーチャルバス停=VBS)をきめ細かく設定している。利用希望者が専用アプリ「MyRideのるる」や電話で希望する出発地と目的地をリクエストすると、他の乗客の予約内容や道路混雑状況等に合わせて、AIが最適な運行経路とスケジュール(ダイヤ)を生成する。
従来の定時定路線のバスは、運行経路・乗降場所・ダイヤが決まっていることから、通勤や通学等で大勢の利用者が毎日決まった時間に同じ目的地へ移動する需要に適している。一方、呼出型最適経路バスは、出発地と目的地が異なる多様な移動需要に適したサービスとなる。
高萩市では、朝と夕方から夜は定時定路線バス、日中は呼出型最適経路バスに切り替えて運行することで、ユーザーのニーズに即し、利便性を向上させている。運行事業者としても運転士1日あたりの乗客数が増えることで生産性が向上し、地域路線バスの持続可能性を高めることにもつながる。
「MyRideのるる」は2021年7月に実証運行を開始し、段階的にバス停数および車両台数の拡大を行ってきた。
〇実証運行の成果
・「のるる」と同じ時間帯に運行されていた定時定路線の利用者と比較すると、「のるる」の利用者は約1.3倍に増加した。
・利用者の2割は、自家用車の利用から移行し、主に運転の不安を感じている高齢者などの代替交通手段として利用された。
・30歳代までの若い世代では、スマホアプリで利用している一方で、70歳以上では、アプリの利用は10%程度となっていた。しかし、電話利用からアプリ利用に移行した高齢者も散見される。
実証運行の結果、2022年10月1日より本格運行が開始された。「のるる」利用料金は、1乗車大人300円、小人150円で、市内在住高齢者に対しての運賃補助制度もある。
デマンド型乗合タクシー
デマンド型乗合タクシーは、路線バスとタクシーの中間的な位置づけの交通形態となる。
高萩市における運行地域は、山間地域と高戸常磐線東・赤浜地区で、そのエリアに居住して、登録している人が利用可能である。
山間地域利用者は、自宅から市街地目的地まで、または市街地から自宅までの利用しかできず、山間地域から山間地域の移動や、市街地から市街地までの利用をすることはできない。月曜日から金曜日で運行されており、山間地域から市街地は1日3本、市街地から山間地域は1日4本が運行されている。高戸常磐線東・赤浜地区利用者は、自宅から数か所の指定停留所まで、または指定停留所から自宅までの利用になる。祝日は除く、月・水・金曜日の運行で、往路も復路も1日3本の運行となっている。自宅から目的地または目的地から自宅の輸送を、固定の運行ダイヤにより、事前の予約があった場合のみ実施し、一つの便に複数の予約者がいる場合は、乗り合いでの利用となる。料金は、山間地域、高戸常磐線東・赤浜地区ともに1乗車当たり400円となっている。
「MyRideのるる」導入の経緯について
・公共交通利用者が減少し、その結果便数の減少による利便性の悪化が進んだ。利用者が少ない日中の時間帯については、定時定路線で使用しているバスを呼出し型として運行することにした。
・茨城県職員(出向)と茨城交通が、みちのりホールディングスで運行している会津若松オリンパス社員用バスを参考にした。
経費について
・全体で5,400万円、デマンド1,127万円、のるる2,772万円、高齢者補助307万円
利用人数について
・1日平均 平日99人 土日32人
委託業者について
・地元のタクシー会社 奇数月、偶数月で予約先のタクシー会社が変わる。
所見
朝および夕方から夜にかけては、定時定路線バスで運行し、利用者の少ない日中に、スマホやAIを活用した呼出型最適経路バスを運行するのは画期的であると思う。実証運行と同じ設定で本格運行に移行し、利用者数も増加傾向にあり、実証実験も的確で、課題に適応したと思われる。瑞穂町では中型バスが走れる道路が限られており、システムを導入しようとするには、今後、普及が進むであろう自動運転車なども考えると、先ずは道路整備をしなくてはならない。また、仮想バス停を設定できる場所も交通量等で制約され、高齢者によるスマホの扱いや端末の普及も課題となると思われる。高萩市の実施している高齢者割引、通学者割引助成、高齢者に対するスマホ購入費助成や、登録や利用方法の説明会を様々な場所で実施していたことは、公共交通利用の促進のため、幅広い支援の在り方として大変参考となった。瑞穂町でも導入について検討すべきではないか。デマンド型乗合タクシーは年齢制限なしで誰でも登録し乗車でき、自宅から目的地(ドアtoドア)まで電話で予約して利用できる。高萩市の利用地域の面積を考えると瑞穂町全地域でも同様に運用できるのではないかと考える。費用が抑えられている点、計画性があり補助金を上手く使っていることなども含め、高萩市で感じられた問題解決、課題クリアのために何とかできないかと試行錯誤し、状況を見ながら常に進化し、改善できることを進めていく向き合い方は非常に重要だと思われる。
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