愛知県豊山町および航空自衛隊小牧基地

更新日 平成29年3月1日

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調査概要

愛知県豊山町

豊山町は濃尾平野のほぼ中央、愛知県の北部に位置する総面積6.18平方キロメートル、人口約1万5,000人強のコンパクトな町である。町域の約3分の1を県営名古屋空港が占める、名古屋市に隣接する利便性と豊かな緑をもつ町である。現在、第4次総合計画を進めていて、「小さくてキラリと輝くまちづくり」の理念のもと、「にぎわいとやすらぎのアーバンビレッジ」の実現を目指している。空港周辺地域は、平成23年12月国際戦略総合特区「アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区」の指定を受けており、航空宇宙産業の育成・振興に取り組んでいる。

県営名古屋空港は、戦中、陸軍小牧飛行場として開設され、戦後、米軍に接収されたが昭和33年に返還され昭和34年自衛隊が入り、昭和35年に名古屋空港となり、その後、国際線ターミナルを備えた名古屋国際空港となり、中部圏の空の玄関口となった。旅客数1,200万人から500万人あった国際空港時代は、町の財政力指数は1.5程度であったが、現在は、1.0前後となっている。

平成17年2月の中部国際空港(セントレア)の開港により、コミューター航空機、国際ビジネスジェット機を扱う新しいタイプの空港として航空自衛隊との共用基地ではあるが、その性格はあくまで民間空港の位置づけを保った。

町では空港と歩む町として、コミューター航空の振興と運行本数の確保を目的に、県営名古屋空港の路線を利用した町民に対し、県営名古屋空港利用促進補助金制度を平成23年度からスタートした。助成金額は、路線片道につき、1年度10回まで、大人3,000 円、子ども(3歳以上12歳未満)1,500 円である。28年度からは、それぞれ2,000円、1,000円とし、28年度予算は520万円である。同様に町商工会の会員にも、空港利用事業所助成金として、事業所ごとに年度当たり6回まで、28年度から1回2,000 円補助しており、28年度予算は16万円である。

空港民間利用実績は、定期便として9都市23便が運航され、平成27年度は県営となって最多となる約73万7,000人となり、チャーター便を含めると約74万8,000人となった。28年7月からは、9都市24便となる予定である。

また、豊山町は、日本初ジェット旅客機であるMRJ(ミツビシ・リージョナル・ジェット)が生産される我が国唯一の地域であることから、航空機の開発、生産の場という役割に加え、学校教育、社会教育、人材育成の場、産業観光の場を目指し、その中核となる航空機をテーマとした見学者の受入拠点施設として、愛知県が「あいち航空ミュージアム(仮称)」を平成29年度中の供用開始予定で整備を進めている。

これにより、拠点施設を中心として、

  1. MRJ工場
  2. 空港施設
  3. 三菱重工史料館
  4. JAXA(宇宙航空研究開発機構)
  5. 航空館boon
  6. 自衛隊基地
  7. 撮影スポット(神明公園展望台)

という航空のフィールドミュージアムが完成される。

航空自衛隊小牧基地

航空自衛隊小牧基地は、濃尾平野の北東部、名古屋市の中心から北方約15キロメートルに位置し、総面積約120万平方メートル、隊員約1,800名で、小牧市、春日井市、および豊山町の2市1町にまたがっている。庁舎地区は小牧市に属す。特色として、愛知県が管轄する県営名古屋空港滑走路を使用していることで、管制権は自衛隊が行っているが、離着陸それぞれに、機種により(主に大きさにより)離陸料・着陸料が掛かることであった。その使用料は、県に納められるとのこと、C‐130H輸送機で約15万円、小さいジェット練習機が約7万5,000円、大型のKC‐767空中給油機は約30万円ということであった。視察日に、練習機のタッチアンドゴーを目の前で見たが、その場合も離着陸料はそれぞれ発生するとのことであった。この度の熊本地震への災害派遣でのフライトであっても使用料が発生するとの説明があった。

所在部隊は、第1輸送航空隊、第5術科学校、航空救難団整備群、救難教育隊、小牧管制隊、小牧気象隊、航空機動衛生隊、小牧地方警務隊の8部隊である。

このうち、航空機動衛生隊は、平成22年の運用開始以来、都道府県知事等からの災害派遣要請に基づき、平成27年度まで23例の重症救急患者の長距離患者搬送を行った。搬送中も集中治療を必要とする患者を集中治療室と同等の設備を有した機動衛生ユニットを用い、依頼元医療機関から治療可能な遠隔地の紹介先医療機関まで、継続した高度な医療監視の下に搬送する。

災害派遣の要請は、自衛隊法第83条第1項で、以下の者ができる。

  1. 都道府県知事
  2. その他、政令で定める者(海上保安庁長官・管区海上保安本部長・空港事務所長)

災害派遣の実施には、防衛省防災業務計画第三第6項により、次の3要素が基準となる。

  1. 公共性(公共の秩序を維持するため、人命または財産を社会的に保護しなければならない必要性があること)
  2. 緊急性(差し迫った必要性があること)
  3. 非代替性(自衛隊の部隊が派遣される以外に他の適切な手段がないこと)

機動衛生ユニットは1台3名まで収容でき、現在2台所有している。自衛隊が開発したもので1台約8,000万円である。主力のC-130H輸送機には2台積載が可能であるが、ユニットの増設の可能性に、増やしても救急搬送チームの人員確保の問題があるとの回答であった。航空救難団整備郡は、全国各地の救難隊、ヘリコプター空輸隊(那覇基地所在機を除く)及び飛行点検機の整備を実施しており、非常に大事な役割を受け持っている。

司令、副司令ほか現場のパイロット、女性整備士の皆さん、案内いただいた自衛官など規律が正しく、士気が高い印象を持った。身の引き締まる思いであった。

所見

豊山町は町内に戦中、陸軍小牧飛行場が開設され、戦後米軍接収までは横田基地と瑞穂町の関係に似ているが、その後の歩みは大分異なったものになった。

県営名古屋空港は、中部国際空港(セントレア)の開港で状況が一変したが、セントレアは橋1本で繋がっているため、防災上、補完空港として、また、三菱重工業など航空機産業隣接という条件、自衛隊基地として有用などのことから県営空港と位置付けられ、航空宇宙産業の一大メッカとして打ち出すことに活路を見出した。

豊山町はコミューター航空の利用運賃に補助金を出して、実績を上げたいとしているが、仮に利用者が下がってしまうと、県営名古屋空港の存在意義について、議論が沸き起こり、その性格が一変してしまう懸念を払拭したいのかもしれないと考えられる。

また愛知県と町の関係では、県の職員を町の理事職として受け入れているが、空港を巡る環境整備や周辺施設整備には県の直接・間接の連携・協力が欠かせないのであろうと感じた。

町長も、国際空港の移転で当初は、人口減少を大いに心配したようであるが、実際は、僅かではあるが増えているということである。これは、国際空港時代には、周辺民間駐車場であった土地に、戸建て住宅や集合住宅が建設されていることと、MRJの量産に向けて三菱重工業の社員が約5,000人規模に増員されたことが大きな要因との説明があった。

今回の豊山町の視察については、豊山町が進める「空港を活用したまちづくり」をテーマとした。豊山町が抱える民間空港と我が町の在日米軍横田基地とでは、その存在意義からして大きな違いがある。しかしながら、空港周辺の住宅密集度には大きな違いはなく、航空機の安全運航に対する地元自治体の願いは変わるものではない。奇しくも視察日は乗員乗客264名が亡くなった中華航空機の墜落炎上事故があった日から22年目であった。町長の「決して事故があってはならないし、また、決して事故を風化させてはならない」との言葉は、航空機が頭上を飛び交う町の共通の思いであり、安全運航に対する願いは基地(空港)を抱える町の共通であると強く感じた。

また、航空自衛隊小牧基地司令は「東南海地震の発生時には、洋上にある中部国際空港に津波被害の恐れがあり、災害時における内陸空港が中部圏の災害拠点として重要な役割を担うこととなる」との予想を語った。国防の観点だけでなく、防災の面でも基地(空港)が持つ意義を改めて認識するものとなった。

愛知県豊山町および航空自衛隊小牧基地の視察の様子の写真1
愛知県豊山町および航空自衛隊小牧基地の視察の様子の写真2

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