幸田町
更新日 令和6年3月13日
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概要
幸田町は、愛知県の中南部に位置し、中部圏の中心都市・名古屋市から45km圏内にある。町全体のまちづくりは、第5次総合計画に基づき、町を南北に縦断する東海道本線の幸田駅、三ヶ根駅、相見駅(新駅)と地域交流拠点ハッピネス・ヒルを4つの都市核とする「3駅プラスONE」構想として、過度な自動車交通依存から脱却した省CO₂型のコンパクトな市街地形成を進めている。このような中で、相見地区は新駅(相見駅)を誘致し、新駅を中心とした土地区画整理事業施行による新市街地の整備、住宅需要への対応、商業・交流機能の集積促進などのまちづくりを進めていた。
地区の概要
相見地区は幸田町の中心部より北へ約3.0kmに位置し、地区内には、広域交通網の軸となる新駅「相見駅」(JR東海道本線岡崎・幸田駅間に新設)が平成24年3月17日に開業し、幸田町における北の玄関口としての役割を期待される地区である。
幸田相見特定土地区画整理事業
施行面積:54.18ha
事業費:75.3億円
施行期間:平成10年度~平成26年度
平均減歩率31.43%
権利者数:480人(平成25年1月時点)
魅力とにぎわいのあるまちづくりを目指して
相見駅(新駅)はJR東海道本線の岡崎駅~幸田駅(駅間7.4km)のほぼ中央に位置し、地元でも明治時代より駅設置が望まれていた。
土地区画整理事業施行の計画段階において、JR東海から提示された新駅設置の条件は、新規乗降客数の確保(50ha規模の市街地整備)であった。
このため、新駅に頼る従来の「新駅設置→まちづくり→人口増加」という考え方ではなく、「まちづくり→人口増加→新駅設置」という考え方で早期まちびらきを重視した「魅力とにぎわいのあるまちづくり」を目指し事業を進めていた。
土地区画整理事業施行過程における課題と解決策
新駅を中心とした集約型都市構造の「魅力とにぎわいのあるまちづくり」を目指し事業を施行する過程でさまざまな課題が発生し、各課題に対してその当時最も的確と思われる解決策を講じていた。
〇計画的なまちづくり
課題(区画整理事業遅延の可能性)
農業政策として、優良農地の市街化区域編入は1機会に概ね20haまで、土地改良事業施行後8年間は市街化区域編入不可という条件のなかで、相見地区の優良農地は約36haであり、このうち2haは平成10年度に土地改良事業が完了したため、平成18年度末の市街化区域編入が最短スケジュールとされていた。
このため、計画区域全域54haが市街化区域編入された後の組合設立では、区画整理事業のスタートが大きく遅延する状況にあり、その回避策が必要であった。
解決策(段階的な地区拡大)
組合設立の説明会時点から54ha全域の区画整理事業として取り組み、地権者の理解を得て、平成10年8月に組合設立(32.25ha)、平成13年9月に二期地区を施行区域に加える第1回変更認可(44.95ha)を受け、段階的な市街化区域編入に合わせた地区拡大の提案を行い、区画整理事業開始の遅延を回避した。
その後、平成19年9月に三期地区を加える第3回変更認可(52.67ha)を、平成20年5月には鉄道軌道を加える第4回変更認可(54.18ha)を受け、当初計画の施行区域を形成するに至っていた。
〇ビルドアップの仕掛け
課題(良好な生活居住機能の整備)
区画整理事業施行前の土地利用は、新駅周辺エリアを中心に農地が広がっており、通常の換地として住宅地を配置した場合、戸建住宅として利用される可能性は低く、アパート利用や農地利用の可能性が高く、ビルドアップに必要となる良好な生活居住環境の確保は難しいと予測されていた。また、新駅を中心とした集約型都市構造の実現のためには、集約拠点にふさわしい賑わいの創出や居住機能の集積を図ることが必要であった。
解決策1(商業施設誘致)
地区近隣には、商業施設が立地していないため、商業施設用地(スーパー街区)を設けて、商業事業者の誘致を進め、平成15年10月、地区を横断する都市計画道路相見線(幅員18m)沿道に、まちびらきの核となる大規模商業施設カメリアガーデン幸田の誘致が実現し、ホームセンター・衣料品・飲食・コンビニ・ガソリンスタンド等をオープンすることができた。この商業施設用地は借地前提の申出換地とし、恒久的な一体利用を想定したスリット換地を行って、借地形態は地権者42名と農協が個別に借地契約を結び、農協が店舗事業者と契約を結ぶ形態としている。この結果、社会的に信頼度が高い農協が中間に入ることで地権者のリスクが大幅に回避できる形態となり、借地料は低額であるものの地権者からは高い評価を受けているとのことであった。
この商業施設のオープンにより、相見線の対面にも沿道商業施設が相次いでオープンし、相見地区の新しいまちづくりを強くPRするメインストリートとなっていた。また、平成22年7月には同様の手法により、スーパーマーケット・家電量販店・物販を中心としたカメリアガーデン幸田(第II期)が拡大オープン(地権者43名)し、より一層の賑わいを演出している。
解決策2(駅前集合保留地街区)
平成20年11月、新駅を中心とした集約拠点の利便性、快適性に優れた生活居住機能の整備促進を実現するため、駅前広場周辺を商業地域として高度利用が可能となるよう集合保留地街区・計約15,000平方メートル)を計画し、民間企業による市街地整備を目的として、立地環境にふさわしい土地利用コンセプトや環境配慮の方針等の提案を求めたコンペを開催し、現在では駅前広場周辺に高層マンションも建っている。
「計画的なまちづくり」、「ビルドアップの仕掛け」など、より良いまちづくりを意識し、取り組んだことにより、新駅の誘致が実現し、その相見駅のインパクトにより「魅力とにぎわいのあるまちづくり」を進めていた。
所見
幸田町は、町の将来都市像として、3駅+ONE構想で既存の2駅に加え、新駅を設置して、駅周辺市街地とさらに町立図書館、町民プール、町民会館周辺の交流拠点を加えた4極を都市核として、コンパクトでまとまりのあるまちづくりを誘導していた。立地適正化計画は策定していないとのことであったが、3駅+ONE構想で、4極を都市核としたコンパクトなまちづくりを目指すことが立地適正化計画そのものであるように感じられた。
その4極のうちの1つである相見駅(新駅)周辺では、鉄道会社から新駅設置の条件として、新規乗降客の確保(50ha規模の新市街地整備)が求められ、「新駅設置→まちづくり→人口増加」という考え方ではなく、「まちづくり→人口増加→新駅設置」という考え方で早期のまちびらきを重視した「魅力とにぎわいのあるまちづくり」を目指し、区画整理事業を行った。
優良農地の市街化区域編入は概ね1回20haまでとの条件の中で、事業遅延を回避するため、3段階に分けて区画整理区域の拡大を行うなどの工夫や、商業施設誘致のため、商業事業者の誘致を進めるための商業施設用地は借地前提の申出換地とし、恒久的な一体利用を想定した短冊状の換地を行うなどの工夫をし、区画整理事業を行っていたことは、新市街地を整備する上での参考になる課題の解決方法であると思われた。
積極的な企業誘致により、大企業が多数立地し、計画的な市街地整備を行い、人口は若干増加傾向であった。若い世代流入で育った環境が違い、旧集落との間でコミュニティ形成の壁や分断の問題はあるが、交流施設等の建設(国の交付金を活用し整備)で対応していた。
3駅+ONEの骨格ができ、さらなる利便性を確保するために拠点施設へのアクセスをどのようにするかが課題となっているとのことであった。コミュニティバス、デマンド型乗合サービスを導入しているが、幸田町のあるべき公共交通の姿を議論しているとのことで、我が町と同じような課題を抱えていると感じた。
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