伊賀市
更新日 令和6年3月13日
ページID 9933
概要
伊賀市は、平成16年11月1日に旧上野市・伊賀町・島ヶ原村・阿山町・大山田村・青山町が合併して誕生した。人口約8.6万人、面積約558平方キロメートル、三重県の北西部に位置している。
住民自治にかかる議論経過
平成12年―市民有志による合併・住民自治のあり方の検討
平成13年―合併協議による「市民アンケート」「有識者ヒアリング」
平成14年―同協議会で「新市将来構想」を策定
平成15年―同協議会で「新市建設計画」を策定
平成16年―同協議会で「自治基本条例」を検討
同年11月1日 伊賀市誕生
同年12月24日 自治基本条例が可決成立
※平成14~16年で住民説明会を300回以上実施
議論のきっかけと社会的背景
■人口減少社会の到来
税収減、社会保障経費の増大、担い手の減少・高齢化
■地方分権の進展(市町村合併)
広い面積を有する伊賀市、画一的な行政サービスでは対応困難
■行政の役割の限界と多様な社会の担い手の登場
一人ひとりの多様化するニーズに個々にきめ細かく対応することが困難
NPOやボランティア等、社会の「公」を担う多様な主体の増加
■地縁組織の自治力低下
担い手の高齢化、減少
家族形態の変化(高齢者世帯、一人暮らし(独居老人))
構成員が世帯であることの課題
役職の輪番制(1~2年で交代する)
⇒ 社会のしくみを見直す必要
地域の事情に応じて、住民自ら考え決定し実行できるしくみが必要
一人ひとりが参加でき、地域課題を共有・検討・対応可能な自治組織が必要
住民自治のしくみ
みんなで考え、みんなで活動できる場づくり
「住民自治協議会」(条例に基づく組織)
※世帯構成→個人参加+多様な主体(NPO・団体・事業者等)による協働
※自治会・区単位→小学校区単位程度の広がりでマンパワーを確保
地域課題の共有→住民による話し合い→実践による課題解決
伊賀市自治基本条例(平成16年12月24日公布)
まちづくりの基本理念「補完性の法則」(条例第3条)
身近な問題・課題については、まずそれらを最もよく知っている住民同士が話し合って解決に向けた実践をし、地域での解決が困難なものや広域的な案件はより広い範囲で取り組む。
住民自治協議会の要件(条例第24条)
住民自治協議会とは一定の地域において、そこに住む人が自由に参加でき地域課題を話し合い、解決できるよう地域住民により自発的に設置された組織
(1) 区域を定める・・概ね小学校区単位
(2) 会員・・その区域に住むまたは活動する個人、団体、事業者等すべてに開かれていること
(3) 組織設置の目的・・良好な地域社会の形成
(4) 規約を定めること・・将来の法人化に対応できる要件を勘案
(5) 組織運営・・役員や代表者は属性の多様性に配慮して民主的に選出
住民自治協議会への支援(条例第27条)
(1) 活動拠点の提供
地区市民センター(各センターに会計年度任用職員を2名配置)
(2) 財政支援
・地域包括交付金
地域まちづくり計画を策定し、地域ごとの総意・工夫を発揮して、地域で使途が決められる交付金
・キラッと輝け!地域応援補助金
地域における課題解決や地域の特色を生かしたまちづくり活動等、住民自治協議会が地域まちづくり計画に沿って主体的に実施される事業を支援
・地域絆づくり補助金
住民自治協議会がコミュニティの強化と交流人口・関係人口の創出を目的として、他の住民自治協議会等と連携して取り組む事業を支援
(3) その他支援
地域担当職員(各支所に配置)
活動事例(1)「地域福祉」
■学童保育・子どもの居場所づくり
(1)住民ニーズが高まった「学童保育」について、福祉系NPOが「放課後児童クラブ」を設立。
(2)子育て中の母親らによるコミュニティの設立。子どもを対象に体験事業や低額の食事の提供を実施。
■地域食堂
地域内の子どもの食生活の改善や大人と子どものふれあいを目的に地域食堂を実施。食の提供のみならず、学習支援や世代間の交流をあわせて実施。
■生活支援サポート事業
高齢者をはじめ、生活支援を要するものに対し生活支援サービスを提供。
活動事例(2)「防災・防犯」
■壬生野地域総合防災訓練
まちづくり協議会が主体となり講演会や避難所運営訓練(HUG)を実施。避難所設営訓練も実施し、地域住民で課題や危険場所の共有認識を図った。
■団地内の雑草除去
自治会が空き地の実態把握を行い、地域のNPOに委託(有料)し、草刈りを実施。地域課題をコミュニティビジネス手法で解決。
■青色回転灯パトロール
青色回転パトロール車によるパトロールを実施し、防犯、青少年健全育成、見守り活動等を実施。
所見
伊賀市は平成16年11月に6市町村の合併により誕生したが、合併以前から市民を中心に、伊賀市独自の自治実現に向けた検討が行われ、市民が主役となった自治を実現するため、「伊賀市自治基本条例」が制定されていた。
自治基本条例では、まちづくりの基本理念として、個人が自らできることは個人で行い、個人では不可能もしくは非効率なことは家族や自治会、住民自治協議会など小さな単位が、さらに、家族や地域で不可能なことは市や県、国などの大きな単位が行うという考え方の「補完性の原則」に基づき、地域の個性が生きた自治を行うことを目指していた。
住民自治のしくみとして、共同体意識の形成が可能な一定の地域において、そこに住むあらゆる人が自由に参加でき、地縁団体やNPO法人やボランティア団体などの目的別団体などとともに、身近に地域の課題を話し合い、解決できるよう、地域住民により自発的に設置される組織である「住民自治協議会」が自治基本条例に位置付けられており、現在、39の「住民自治協議会」が設置されている。
この「住民自治協議会」には、市長の諮問に応じて、当該地域に係る条例に定める事項を調査審議し、市長に答申をしたり(諮問権)、当該地域の住民に身近な市の事務執行等について、協議会での決定を経て、市長に提案することができること(提案権)や、当該地域において行われる住民生活と関わりのある事務で、地域に重大な影響が及ぶと考えられるものについては、住民自治協議会の同意を得るものとすること(同意権)、また、当該地域で行うことが有効と考えられる市の事務を住民自治協議会が受託する決定をした場合には、これを尊重する(受託決定権)等の権能が与えられている。
市は住民自治協議会へ活動拠点の提供と活動に対する財政支援を行っていた。財政支援では、令和4年度は39住民自治協議会に地域包括交付金として約1億2000万円を支援している。
この交付金はある程度の使途における自由が与えられ、「地域福祉」、「防災・防犯」や「地域振興」などさまざまな活動が行われていた。本来単年度使いきりであるが、残額が生じた場合、街路灯のLED化のための基金とすることもあるとのことであったが、LED化のような事業は行政が全体を見通してやるべきとも考えられるが、市の面積が我が町の約33倍と広い面積を有する伊賀市と我が町では、どこまでを地域で担い、どこから行政が担うのかという違いが生じるものと思われ、単純には比較できないものと考えられる。
瑞穂町においても連合組織はあるが、町内会・自治会同質の団体をまとめただけで、現状を打開するにはなかなか難しいと思われる。伊賀市の「住民自治協議会」は、過去からの地域性、経緯もあるが、小学校区単位程度の広がりで、そのような地域の設定は、学校を避難所として利用する場合などの災害対応の観点からとても有効であると思われる。また、世帯単位ではなく、個人が参加でき、NPOや団体、事業者等の多様な主体がかかわれるしくみとなっている。地域性や経緯も違い、伊賀市の「住民自治協議会」を瑞穂町にそのまま取り入れることは難しいと思うが、NPOや団体、事業者等の多様な主体がかかわるということは、今後の地域づくりや地域コミュニティの活性化に必要と考える。
第5次瑞穂町長期総合計画では、コミュニティの現況と課題で、一定の分野に特化した活動を行う「テーマ型活動」と従来からの町内会・自治会などの「地縁型活動」の連携など、包括的な地域活動組織の育成がもとめられているとして、コミュニティ活動の活性化に向けて、地域のさまざまな分野で活動する団体を把握し、新たな地域コミュニティのあり方の研究・検討を進め、協働事業の推進につとめるとしているが、個人がやるべきこと、家族や友人、知人がいなければできないこと、そして行政がやらなければならないこと、そこには不明瞭な領域が存在する。今後、ますます拡大するその領域を誰が埋め合わせるのか、地縁団体やNPO法人、ボランティア団体等が、地域で活動する中で、横串となるコーディネートの役割が非常に重要と考える。伊賀市の取り組みは、「機能する地域」を目指すものとして、大いに参考にすべきものと考える。
このページについてのお問合せ先
アンケート
ウェブサイトの品質向上のため、このページのご感想をお聞かせください。