奈良県田原本町およびNPO法人上野丘さつき家族会

更新日 平成29年3月1日

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調査概要(奈良県田原本町)

  1. 平成16年に路線バスが一部廃止されたことにより、高齢者等の買い物・通院といった日常生活の移動支援を行うための施策が必要となった。
  2. 平成22年9月、町商工会が事業主体となり、デマンドタクシーの実証運行を行った。
  3. デマンドタクシーの運行エリアは法律上、町内に限られている。
  4. 停留所は自治会の実情を考慮して設置しているが、概ね各自治会内に2か所程度である。
  5. 予約は1週間前から乗車の3時間前であるが、帰りは30分前でも可能にしている。
  6. 利用希望は土曜日・日曜日が多いが、一般のタクシー利用客を考慮し、土曜日・日曜日の運行は行っていない。これについて利用者の一部から苦情が寄せられたことがあるとのことだが、田原本町辻議長によると「そうした苦情もあるが多くの町民から好評である」と話があった。
  7. 身体障がい者の利用も可能だが、町の福祉サービスで対応できている。
  8. 平成25年度より効率化を図るため、事業主体を「田原本町地域交通活用協議会」に移行した。
  9. 協議会の人選は法律に基づいたもので、町独自の人選は行っていない。
  10. 町内にはタクシー会社が3社あり、その内の1社と3年間の契約をしている。
  11. 契約単価は当初1便15分を想定し、一台当たり5,245円とした。現在、利用者増、特に朝方に集中する利用者の重複を解消するため、2便運行にしている。
  12. デマンドタクシーの利用料金は、既に導入している自治体を参考に検証し、移送距離に関わらず300円(小学生150円)とした。なお、料金設定において、事業者からの要望はなかった。
  13. デマンド型あいのりタクシーで運行する場合には、車体にそれと分かるようにマグネットシールを貼っている。
  14. 平成26年度の経費は総額1,076万円で、内訳は運行収入約140万円、国の補助金(地域公共交通維持確保改善事業)200万円、町の助成金が約740万円である。
  15. オペレーションはタクシー会社が行っており、設備投資、オペレーターの確保等の必要はない。

奈良県田原本町の視察の様子の写真

調査概要(NPO法人上野丘さつき家族会)

  1. 平成17年に実施された住環境アンケートに基づき、交通アクセスの充実を望む住民の声が多いことから、住民の手で移動手段の運行ができないか検討を進める。
  2. 計画から4年の歳月がかかり、平成21年3月29日にNPO法人「上野丘さつき家族会」として運行を開始する。
  3. ゾーン・バスの運行エリアは法律上、北区淡河町内に限られている。
  4. 停留所は場所を考慮して設置しているが、高齢者の利用者が多いため、自宅近くまで送迎している。
  5. 予約は上野丘さつき会で受ける。
  6. 行政からの助成金・補助金は受けず、1回250円の料金で運行 し、利益も計上している。
  7. 障がい者施設の所有する車両をシェアリング利用することで、車両費負担はない。負担は燃料費と維持費であり、設備投資は停留所の看板のみである。
  8. 隣接する地域で、無料運行を謳って開始したが早々に撤退をし た。
  9. 淡河町は平成27年9月現在で人口2,794人となるが、利用者は8割の人が登録をしている。
  10. 運行当初は月200人で黒字と考えていたが、現在は多いときは700人の時もある。
  11. ゾーン・バスで運行する場合には、車体にそれと分かるようにマグネットシールを貼っている。(ゾーン・バスのPRは口コミによる)
  12. 主に町民の買い物や病院などへの移動支援だが、日曜日などはグランドゴルフ大会などのイベント時の移動支援も行っている。
  13. 運行に際しては、迎えに遅れないことが最重要。また、高齢者対策として、忘れ物に注意する。乗り降りに踏み台を置くなどしている。
NPO法人上野丘さつき家族会の視察の様子の写真1
NPO法人上野丘さつき家族会の視察の様子の写真2

所見・提言

奈良県田原本町は総面積を21.09平方キロメートル、人口は31,653人(平成27年5月1日)で、わが町と同程度の規模の町である。平成16年に民間バス路線の一部が廃止されたため、住民の買い物や通院などの移動支援と地域の活性化のために、早急に交通アクセスヘの施策が必要となった。

田原本町は古くから道路が碁盤の目のように整備され、風情のある街並みである。しかし、駅前周辺の道幅は狭いため、大型の車両より小回りの利く車両ということで、デマンドタクシーの選択となり、現在、多くの町民が利用している。現時点ではまだ赤字であるが、利用者数の増に伴い、年々赤字額が縮減されてきており、今後黒字化を目指し事業を推進しているとのことである。

2日日に視察した神戸市北区淡河地区は、現在、人口が2,794人。5年前の人口約3,300人と比較すると著しい減少が見られる。また、高齢化率も年々増加し、現在33パーセントを超えている。

地形は山間地域ではあるが、中央の幹線道路は整備されている。民家の周辺道路は狭溢道路が多く、ゾーン・バスでの送り迎えは臨機応変に行われている。路線バスは神姫(しんき)バスが一路線運行しているが、淡河町の広い範囲は補えていない。そこで、交通アクセスの充実を望む住民の声に応えるため、ゾーン・バスの運行を開始した。しかし、実現するまでには、法律の壁、バス会社との交渉、NPOの立ち上げ、資金などのさまざまな課題があり、これらをすべて解決するまでに4年という歳月がかかったとのことである。これには理事長の相良氏の熱意と行動力によるものであることには疑いようもないが、相良氏の話では「町内にバス会社の株主がいたことも幸いし、なにより、過疎地域の交通問題に高い関心を持つ職員の協力が大きかった」とのことである。官民の二人の協力が現在、過疎地域の多くの住民の生活を支えていると感じた。

現在でも行政に頼らず、助成金・補助金も受けずに運行し、利益もあげていることは驚嘆する。しかし、この事業の後継者問題の課題も残されていた。淡河町の例は一人の傑出した人物により実現できたものであるが、実施主体が行政でも民間事業者でもNPOでも、経済的な問題や後継者問題により持続困難とならないように、事業の継続性において住民に不安を抱かせることのないような施策が必要である。

今回の2か所の視察を通じて、大いに注視することは、田原本町は、オペレーション(配車)システムを民間のタクシー会社が担い、ゾーン・バスは福祉団体の車両を借りるという、双方とも設備投資することなく、民間の力を最大限活用し、必要最小限の経費で運行事業を行っていることである。これは、大いに参考にするべき手法である。

わが町の公共交通機関はJR八高線があり、箱根ケ崎駅を起点として路線バスも3社が乗り入れている。しかし、現在、その路線および運行本数では、交通アクセスにおいて、地域格差を埋めることができていない。このことは、町の長期総合計画の基礎調査資料においても、最も住民要望が高いのが交通問題であることからも明らかである。

こうした状況を受け、わが町は、再編交付金を原資に平成22年より福祉バスの運行を始め、平成27年には、より多くの利用者の確保と利便性向上のため、路線を大きく見直すなど、町側の努力と工夫には一定の評価をするところであるが、原資が底をついた場合にどうするべきなのか。現在、福祉バスに日常生活を多く依存している利用者に不安を抱かせるようなことは避けなければならない。

今後ますます進展する高齢化、福祉バスの基金額等を鑑みた時、新たな移動支援策は避けて通ることができない。住民要望の多い交通問題を是正するために、各関係機関との協議を重ね、また、民間交通事業者の協力の可能性も模索するなど、新たな交通システム導入に向けた検討を行うべき段階に来ていると認識する。その選択肢の一つにデマンド型タクシーがあることを申し添え、所見とする。

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