調査目的

町には、平成25年1月現在、一人暮らし高齢者1,684世帯、高齢者のみ世帯1,211世帯、合計2,895世帯が高齢者世帯となり、全世帯数の20.6パーセントを占める。高齢化率も22.4パーセントという状況である。今後、高齢者がそれぞれの地域で安心・安全に生活できる仕組みづくりが必要となる。そこで、妙高市の地域安心ネットワーク推進事業を視察し、高齢者施策に寄与することを目的とした。

調査概要

行政面積が瑞穂町の約26倍もあり、過疎化が進み、高齢化率も30.6パーセントとなっている妙高市は、平成20年度より地域住民、地域組織、各種サービス関係者（保健、医療、介護など）、民生委員、社協、行政などによる「地域に支えあいネットワーク」を構築することで、限られた資源を強い連携で結びつけ、最大限に生かすことが必要との考えで、地域安心ネットワーク推進事業を実施していた。
最初の取り組みとして、平成20年度から平成22年度には高齢化、過疎化が著しく進展している28集落をモデル事業とし、平成23年度から平成25年度は高齢化率29パーセント以上の集落や隣接する100町内会を対象として実施した。この取り組みは、効果があると判断し、27年度までに残りの64町内会、集落にも広げ、全市で取り組む予定となった。
事業の内容は、支援が必要な住民（高齢者独居世帯・高齢者のみ世帯・高齢者日中独居世帯等）を対象とし、見守りが必要な人や世帯に対し、日ごろから付き合いがある方2名から3名に、身近で穏やかに支援をする「生活支援員」になってもらう。また、地域に核となる「地域支援員（地域で活動されている住民）」を配置する。そして、対象者には連絡ノートを作り、それを介して、民生委員、社会福祉協議会、行政と連携し情報を共有しながら、孤独死などの発生が起きないよう見守りを行うものである。無償での活動は使命感や義務感にとらわれなく活動しやすいとの委員からの声があがっており、現在までに、725ネットワークが構築されて活動をしている。
また、引きこもりをさせないようにと、地域の集会場などで、「つどい」と称する居場所作りが行われ、そこでは、元気茶屋、地域元気教室、ラ・フランス(洋梨)などのネーミングでのミニサークルも活発に活動されていた。男性の参加が少なく苦慮しているため、参加率が高い「筋力トレーニング講座」のように数字が毎回確認できる講座を工夫していきたいとのことである。
そのほか、市内にある高校の生徒に、ボランティア活動に参画してもらうなど、ボランティア育成事業にも取り組んでいた。

所見

町でも、高齢者率が2割を超え、一人暮らし世帯や高齢者のみ世帯も増加している。町で実施している、配食サービスや乳酸飲料配達などの施策だけでは、対応が不十分になる状況が到来するものと考えられる。それぞれの地域に根ざした見守りのネットワークの構築が必要である。見守りというと、支援者側に役割や責任が重く問われるようで、その担い手確保が課題とされやすいが、妙高市が昔ながらのご近所づきあいのような緩やかな見守りで、生活支援員を確保し、725個ものネットワークの構築を実現していることは、大変参考となるものと考える。誰もが気軽に出来る見守り活動に参加することは、地域の安全や安心感の醸成にも役立つものと思われる。社会福祉協議会・民生委員・地域での支援員などと情報の共有が出来、妙高市のような太いネットワークが図られれば、支える大きな力となり、住み慣れた地域、家庭で生涯自立した生活が送れることを望んでいる高齢者の助けとなりうる。
また、引きこもりや孤独死が発生しないためには、何らかの対策が必要である。町でも「まちかど」など居場所作りの取り組みを行っているが、妙高市が「つどい」の取り組みとして、身近な場所で、お茶のみやサークル活動ができ、活発な交流が図られていることは、これからの取り組みの参考となると考える。妙高市でも「事業を始めた当初は、生活支援員がどういうものかを理解してもらうのに時間がかかった。しかし、一人ひとりに語っていく中で、理解が広がり、ネットワーク構築ができた。」と熱く語る担当者の言葉に、見守り事業の大切さを強く感じ、わが町でも是非進めていきたいと感じた。