兵庫県小野市

更新日 平成29年3月1日

ページID 400

印刷

調査概要

1 教育委員会の権威意識の払拭

教育委員会と現場の垣根を取り除くため、教育委員会に対して抱かれているイメージ、いわゆる「権威主義」をいかに払拭させるかが重要であると考え、そのために、教育委員会の持つ権限を制限し、学校や教育現場の主体性を醸成させた。具体的には次の5項目である。
(1)教育委員会による学校訪問を廃止し、現場に任せることを徹底。
(2)学校独自で教育研究を行えるようにするために各校それぞれに50万円の自由裁量権として予算化。
(3)教員の定例的となっている教育講演会の出席義務を廃止。
(4)卒業式の告示報告を廃止。
(5)各校の学校長推薦の教員1名を「夢と希望の教育推進委員会(教育方針も含め必要な施策を定める)」の委員に任命。

2 毎年行われる川島教授の講演会と公開実験

毎年、川島教授の講演会を実施。脳波測定器などの機器を使用し、科学的に分かりやすく説明している。

3 小中全教員で作る「小野検定」

小野検定は1冊300円(市外500円)で販売。小学校1年生から中学3年生程度の問題で、漢字や計算文章問題など級によって難易度が異なっている(学校の教員の異動がほぼ市内で循環する、小中の教員連携で子どたちの成長を見届けることができることが事業の引き継ぎを円滑にしている)。

4 3名の教育支援スタッフがアフターフォロー

小野検定の採点は、3名の教育支援スタッフが行っている。また、正解率を分析し、正解率の低かった問題は教員に報告される。また、検定に合格しなかった生徒に対しては支援スタッフが学校を訪問し、分かるまで補講をする。

5 小学校の先生が中学の、中学の先生が小学校のサポートティ―チャーに

小中連携を推進する上から、市では6・3制を4・3・2制と捉え指導している(脳科学による脳と精神の発達の裏付け)。これを可能としているのが教員の円滑な移動である。学校間の移動については自家用車の使用が許可されている。

6 小中全教員で作る「夢と希望の教育」リーフレット

教育に関する保護者向けの冊子を作成し配布していたが、数ページに及ぶため、結果的に読まれない。そこで、全教員が集い、一目で分かるようにリーフレットを作成した。

7 校区の特色を生かす

平成16年度から4中学区ごとにテーマを決めて小中連携を推進している。

8 「16カ年教育(妊娠期からスタートする教育)」

妊産婦健診と子育て教室等の中で、「子どもの脳の発達について」をレクチャーしている。

9 小学1年生、小学6年生、中学2年生の3名が1組となって行う小中合同遠足

中1ギャップの抑制、高学年へのあこがれの醸成、高学年への責任感を醸成させる。

10 高校生が指導する理科実験教室(SSH)

明石北高校の生徒が児童生徒の授業において、理科実験授業を行っている。単に理科・科学に対する興味を醸成することに留まらず、小学生は中学生に憧れ、中学生は高校生に憧れるという付加価値が期待できる。

11 障がい児の学習支援・生活支援

東大・ソフトバンクの共同プロジェクトで生徒と教員2名分のスマートフォンを無償で貸し出し、障がい児の教育・生活支援を行う。現在、協力校を募集中。

所見及び提言

小野市が教育力の向上にどれほどの力を傾注しているかは、前頁の「注目すべき施策とその内容」からも明らかである。一般的に「閉鎖的」「学級文化」との批判を受けている教育行政・教育現場の中で、何ゆえ市行政・全教員が市行政や住民と一丸となれたのか。それは、川島教授のバックボーンに尽きるといっても過言ではない。一般的に、人は自らの行動や言動は、自らの経験に基づいて判断しているが、教授の公開実験とその結果を目の当たりにし、住民も職員も現場教師も「科学的根拠」に基づいた子育てや学習指導の効果を認めざるを得なかったからであろう。
川島教授に依頼するきっかけは「10年後の世の中を予想した時、子どもたちに身につけさせておかなければならないことは何か」を教育委員会が中心となって調査・研究した結果、脳科学にいきついたからとのことである。しかし、それを具現化するために何をすべきかが大きな課題であった。教育関係者・現場教師の意識改革がまずもって不可避だからである。そのため、市教育委員会は、教育委員会の権威主義の払拭のための改革と、脳科学の日本で先駆者となっている川島教授の市への招聘を実現化した。川島教授は多くの教育関係者、子どもたち、保護者、市職員の前で公開実験を行ったのである。この公開実験は、思惑通り、教育関係者に留まらず、住民全体に広がりをみせ、結果的に、脳科学に裏打ちされた教育の必要性が多くの方々に認識され、意識改革に繋がっていったと推察される。また、教育委員会の内部改革により教育委員会の権限を現場に落としたことで、各学校、各教員が主体的な取り組みを見せるようになっていったことも注視すべきである。「何をしたかではなく、成果をもたらすために何をすべきか」という強い意思を教育関係者が共有してことに及んだ故の成果であろう。これだけの改革をなぜ断行できたのか伺ったが、担当者が「教育長の強い熱意があったからで、教育長がいなければ実現できなかったと思う」としみじみと話してくれた。
現在、小野市には子どもを抱える比較的若い世帯の方々の転入が増加している。これは、県内で唯一中学までの医療費無料化を行い、かつ、学力向上に繋がるという市の魅力を求めてのことであると容易に想像ができる。若い世代の転入は労働人口の増加であり、地域経済の活性化をもたらすことになる。教育は決して将来の投資だけではないという側面を我々に証明してくれた。わが町にとっても、今後のまちづくりの重要なヒントと受け止めたい。
なお、脳力トレーニングは近隣市にある刑務所においても実践されているとのことで、既に効果は実証され、広がりを見せていることも見逃せない事実であると申し述べておきたい。
現在、川島教授の能力トレーニングはわが町においても、一部の民間の介護施設・教育機関でも行われ、現場関係者からは効果が大きいと聞き及んでいるが、残念ながら未だに認知されていない。これは、単に民間事業者のPR不足と結論付けてはならない。公的立場が民間事業者に対して必要以上に警戒感を持っていることに起因している可能性が否定できない。いずれにおいても、川島教授が提唱する「前頭前野」へのトレーニングが、老若男女すべての人にとって有効な施策であることは科学的に実証されている以上、わが町も早急に対策を講じる必要があると考える。

最後に、私たちの視察研修に最後まで同席していただいた小野市の議長が「子どもたちが、自分の住んでいる故郷に誇りを持つ。それには、自分にも故郷にも自信が持てることでしょう。それを創りだすことが最も大切な我々の使命じゃありませんか。」と力強く話されていた。この言葉をしっかりと心に留め、誇りの持てる我が町となるよう町民一丸となって汗をかいていかなければならないと思った。

兵庫県小野市の視察の様子の写真

このページについてのお問い合わせ先

議会事務局 議事係

〒190-1292 東京都西多摩郡瑞穂町大字箱根ケ崎2335番地
電話 042-557-7693
ファクス 042-557-4433
メールフォーム
受付時間 平日の午前8時30分から午後5時まで

アンケート

ウェブサイトの品質向上のため、このページのご感想をお聞かせください。


簡易アンケート

より詳しくご意見・ご感想をいただける場合は、メールフォームからお送りください。