兵庫県川西市

更新日 平成29年3月1日

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調査概要

川西市子どもの人権オンブズパーソン制度は、子どものSOSを受け止め、いじめや体罰、不登校、虐待などの人権侵害から子どもを救済するための「公的第三者機関」である。個別具体的に子どもを救済するために、相談活動や調査活動などを行うと共に、子どもの救済から見えてきた課題に対しては、「子どもの最善の利益」を確保する観点に立って、是正や改善を求めて勧告や意見表明などの提言を行う。組織・人員体制は、オンブズパーソン3名(現在は大学名誉教授、弁護士、大学講師)と調査相談専門員(相談員)4名で構成され、オンブズパーソンから必要な専門的知見や情報提供を求められたときだけ活動する調査相談専門員(法律、医療、学校教育、福祉等の専門家)が8名いる。また、1名の行政職員が事務局事務員としてオンブズおよび相談員を補佐している。

活動内容は、相談活動、調整活動、調査活動、広報・啓発活動の4つである。まず、相談員が電話や面接で丁寧に話を聞き、子どもが相手や周りの大人などとの対応を自ら行えるように、子どもをエンパワーメントするように援助する。オンブズパーソンが直接保護者等の相談に応じることもしている。また、相談者が希望すれば、問題解決のために関係者間の調整活動も行う。平成23年度の相談案件数は148件、述べ相談件数は598件であった。そして、相談を継続するだけでは問題解決が困難な場合で、客観的な事実関係の把握のため第三者による調査が必要と考えられるケースなどについて、子どもの擁護救済の申し立てがあった時、オンブズパーソンや相談員が関係機関に対して聴き取りを中心とした調査を実施する。また、オンブズパーソンが独自入手情報から、自己発意により調査を実施する場合もある。平成23年度の調査申し立ては3案件で、延べ87回の調査を実施した。子どもの人権救済を図りながら「子どもの最善の利益」の観点から、行為の是正や制度の改善を必要とする場合などは、関係する機関に対し条例上の対処を行う。また、広報・啓発活動も重要な仕事である。オンブズパーソン制度とその活動を広く知ってもらい、効果的に活用されるよう、市広報誌やホームページの掲載はじめ、電話カード・パンフレットの配布、子どもたちの事務局見学、子ども同士が自由に語り合う場、居場所づくりとして「子ども☆ほっとサロン」の開催など広報・啓発活動に力を入れていた。

所見及び提言

川西市子どもの人権オンブズパーソン制度ができた背景には、学校内外における「いじめ」による子どもの自殺が全国的に頻発し、深刻かつ大きな社会問題になっていたことが上げられる。

川西市では、積極的な問題提起により協議会を開催。いじめ等への対策を検討する中で、それまでの多くの対策は対処療法にとどまるものであり、抜本的対策が確立されていないことが指摘された。今後の抜本的対策のあり方は、1994年に日本が批准した子どもの基本的人権を国際的に保障するために定められた「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」(1989年11月国連採択)の理念に照らして、「子どもの権利をいかに確立するかにある」との方向性を確認し合った。「子どもの人権と教育検討委員会」(会長 上杉孝實京都大学教授)が設置され、同委員会から提出された22項目にわたる提言のなかで、「子どもの人権オンブズマン制度」の創設が提起された。

川西市のオンブズパーソン制度の優れているところは、当初の「市教育委員会に置く」を「市長の付属機関とする」としたところである。1998(平成10)年、日本は、国連子どもの権利委員会から「子どもの権利条約」批准後の我が国における子どもの権利の実施状況に対し22項目の提案及び勧告を受けた。その中で、オンブズパーソンの設置については、「独立した監視機構を設置するために必要な措置を取る」よう勧告を受けた。そのことを重視した川西市議会では、「市教育委員会に置く」を「市長の付属機関とする」に修正の後、「川西市子どもの人権オンブズパーソン条例案」を可決。市長部局に置くことにより、子どもの人権問題解決に向けては、市教育委員会といった一組織でではなく、市をあげた総合的な対策が図られ、真に実効性あるものとなった。

また、子どもの悩みに対し、相談員が受容的に丁寧に徹底して話を聞くことにより、子どものエンパワーメントが図られていると感じた。そして、問題解決には、なんといっても大学名誉教授(発達心理学、子ども学)や弁護士(少年問題、親子の法律)などをはじめとした専門家の存在が大きい。この制度であればこそ徹底した調査・調整活動も可能となる。その大きな根拠となるのが「条例」と「施行規則」である。問題解決に向け、客観的な事実関係の把握のため第三者による調査が必要となった場合、条例上の対処に対して関係者(機関)は調査に応じる義務があるからである。

オンブズパーソン制度の効果としては、関係機関に提言を行う事により、制度や行為に対する改善や見直しがなされたとの説明があった。具体的には、部活動での死亡事案に係る熱中症予防対策、保育所における感染症防止対策、小学校給食における食物アレルギー対応などが大きく前進したとのことである。

昨今のいじめ問題などを考えると、わが町でも問題解決のため、独立性のある公的第三者機関「オンブズパーソン制度」の設置が望まれる。専門性の高いオンブズパーソンの登用など課題はあるが、まず、設置の方向に向け一歩踏み出すことが肝要ではないだろうか。

兵庫県川西市の視察の様子の写真

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