兵庫県尼崎市

更新日 平成29年3月1日

ページID 398

印刷

調査概要

尼崎市(職員約3,000人)では職員の死亡や休職者が減少せず、医療費の増加や住民サービスの低下が危惧されていた。そこで、平成12年度より職員の健康支援に配置された野口緑保健師をリーダーに、健康管理戦略を計画し、実行した。計画の内容、手順は次のとおりである。

  • 「人しれず作戦」(秘密裏に医療費の情報を基にレセプトを丹念に分析する。)
  • 分析の結果、特に、脳・心疾患予防(メタボリックシンドロームの改善)に焦点を当てる必要性を認識。
  • 科学的根拠や臨床的な裏づけ(血圧値等を基に緊急度を設定)に基づいた健康指導を実施。

これらの取り組みの結果、死亡者・休職者の減少。傷病手当金は平成11年度9名で1,656万円が、平成16年度には3名880万円に。医療費は職員全体で約500万円減少するなどの成果が認められた。

この成果を受けて、市は「行政改革の本丸」と位置づけ、これまでの成果をヘルスアップ戦略事業と銘打ち、まちづくりの中枢に据えて「予防で救える命は死なせない」を旗印に、「個人が変わる」・「個人が変われば地域が変わる」・「地域が変われば国が変わる」との強い信念で保健課を中心に市全体で取り組んでいる。特に、国民健康保険被保険者である市民に有効に浸透するよう、様々な角度から調査研究され、実行予算もほぼ予算請求額通りとなるなど、全面的なバックアップ体制を構築した。

現在は、野口健康支援推進担当課長を中心に、職員や国民健康保険被保険者のみならず、現在取り組んでいる教育委員会と連携しての子どもの健康教育と、11歳、14歳の生活習慣病予防健診の完全実施を目指している。また、市内の企業に対しても啓発活動を行い、早期の予防対策を推進していた。

所見及び提言

自治体の健康事業の成功事例として注目されている尼崎市だが、成功の背景には、保健師の野口緑係員の存在が大きい。我々は、なぜ保健師が主体的に活動できるのか、その背景を伺ったが、野口氏は「「保健師の仕事だけを考えている人は民間に行ってくれ。行政職員は制度をつくることが本来の使命だ」との精神で、同僚の保健師と効果的な健診事業制度を作り上げてきている」とのことである。また、保健現場からの改善提案に対して、何ゆえ事業決定し、予算化が図られたのかを担当部長に伺ったところ「部内においても、財政当局との予算折衝においても、保健師から示されたデーターや予防戦略が、疑義をさしはさむ余地がないほど明確であった」とのことであった。このことから我が町において検証すべきことは、町の健康事業として、現在収集しているデーターは合理的で、説得力のある内容なのか、現場の声が反映可能な組織体制になっているかということである。

現在、わが町では、東京都のデータによると、国民健康保険加入者で、腎臓疾患系罹患率が、女性がワースト3位、男性がワースト6位という現状となっている。重症化予備軍対策も、いっそうの拡充は避けては通れない段階となっている。こうした状況の中で、わが町でも予防対策に重点をおいて展開を図っていることは認識しているが、十分な成果は得られていない。今後は、レセプトなどの基礎資料をデータベース化し、詳細かつ丹念に分析し、課題を見つけて戦略を立て、実行していくことで現行の打開が可能であると確信する。尼崎市がそれを証明している。

また、注目すべき点として、市と我が町とでは、個人情報についての認識と取り扱いに相違点があった。わが町は現在職員の健康診断結果や投薬記録は個人情報なので開示は困難との方針である。しかし、尼崎市では、保健師がすべての職員の情報を一元化してデータベース化し、その人に合った適切な保健指導がなされている。だからこそ良い結果が得られているのである。個人情報に対する考え方が、健康と命を守ることを阻害する要因になっていることを認識し、打開策を早急に検討するべきである。

最後に、13万人を抱える市にあって、7名の保健師では負担が重すぎないか伺ったが、「大変だけど数値が出るので毎日やりがいがあります」と野口氏の力強い答えが返ってきたことが印象的であった。

わが町においても、これまで以上に予防施策を充実させていかなくてはならない。そのためには、町民とフェイス・トゥ―・フェイスでつながる、現場職員のマンパワーを生かす仕組みが求められる。また、個人情報の取り扱いや町民への意識啓発の問題など、打開すべき課題は多岐にわたってあるが、町全体で取り組むことで実現できるものと確信する。尼崎市の取り組みを参考に、わが町の予防事業においても、具現化できるところから取り組んでいくべきであると提言し所見とする。

兵庫県尼崎市の視察の様子の写真

このページについてのお問い合わせ先

議会事務局 議事係

〒190-1292 東京都西多摩郡瑞穂町大字箱根ケ崎2335番地
電話 042-557-7693
ファクス 042-557-4433
メールフォーム
受付時間 平日の午前8時30分から午後5時まで

アンケート

ウェブサイトの品質向上のため、このページのご感想をお聞かせください。


簡易アンケート

より詳しくご意見・ご感想をいただける場合は、メールフォームからお送りください。